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デジタルトランスフォーメーション  次世代型コミュニケーション手法の進展と課題

公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)は、2018年8月22日(水)、23日(木)の2日間、「JAGAT Summer Fes 2018(夏フェス2018)」を開催いたします。当イベントでは、「デジタル×紙×マーケティング」をテーマに、様々なカンファレンス・セミナーを実施します。それに先駆けて、前回行われた「夏フェス2017」セッションの内容を一部紹介します。

変化が求められる時代

シュリンクしている印刷市場の中で、印刷会社はトランスフォーメーション(変革)していくことが必要であり、その一つの解がデジタル化である。
今はVUCA の時代、つまり不安定で不確実、疑心暗鬼な時代になっており、生き残るためにデジタル化した事業活動や組織にトランスフォーメーションしなくてはならない。
デジタルトランスフォーメーションとは、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱したもので「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念である。その意図は企業活動のプロセスと、それを行う組織の転換である。
エリック・ストルターマン教授はデジタル化のフェーズは3つに分けて、第一フェーズはIT利用による業務プロセスの強化、第二フェーズはIT による業務の置き換え、第三フェーズでは業務がITへ、ITが業務へシームレスに変換される状態になる。
デジタルトランスフォーメーションは、問題解決を速やかに行い競争の優位性を築くために、企業をデジタル化組織に変革することである。
これまでの企業活動、一般的なマーケティングや、アナログメディアのコンテンツ、単発的な販促活動、現金決済、一括大量生産など、非連続で非データ連携のものをデジタルの力を借りてデータ連携型の企業活動に変えていくのがデジタルシフトで、デジタルマーケティング、デジタルメディアコンテンツ、デジタルプロモーション、デジタルペイメント、デジタルファブリケーションになる。
デジタルシフトは、モバイル、ソーシャル、ビッグデータ、クラウド、AI、IOT、ロボティックス、AR・VR・MR、ブロックチェーンなどの技術進展によって、それらを用いてデジタル化していく。広告業界であればAd tech、流通はRetail tech、金融はFin tech、保険はIns tech、教育はEdu tech、農業はAgri techでさまざまな産業での活用が始まっている。これらをすべてひとくくりにしてデジタルトランスフォーメーションなのである。

デジタルマーケティングの活用―運用型ビジネスに活路?

広告主は、マス広告とデジタル広告の予算配分について悩んでおり、ベストな予算配分を探している。その中で急成長しているのが、ウェブ運用型広告である。
PCの時代からスマートフォン(スマホ)の時代になって、画面を見る回数が増えた。スマホからの接触率が非常に増え、広告の在庫回転率が上がった。ここでキーになるのがIDログである。スマホではクッキーではなくてマックアドレスになるが、マックアドレスもこれから取得が難しくなる。そうなると、IDを取得できるのは例えばヤフーや楽天などのメディア業者、IDを持ったベンダーが強くなると思われる。
デジタルマーケティングでは、いろいろな事業レイヤーで、いろいろなプレイヤーがビジネスを行うわけだが、印刷会社がどこでビジネスを行うかというと、運用型ビジネスのプレイヤーになることだと林氏は考えているという。広告・広報ではウェブ運用型広告、営業・販売のところはマーケティングオートメーション(MA)運用がある。
デジタルマーケティングで生活者の目に触れているのは主に以下の4つがある。
①ウェブを見ると関連するコンテンツがすぐに出てくる。
②特定のページを見ると他のページに移動しても、広告が追っかけてくる。
③特定のボタンを押すと、すぐにメールが送られてくる。
④タイミングよくポップアップ画面が出る。

デジタルマーケティングツールの活用

ある企業のファネルを例にとると、購買にいたるまでに認知して、興味を持って、情報を取得してもらうが、継続的に情報を提供と取得を重ねる。ここまではリードシナリオで、これは潜在顧客の顕在顧客化である。いったんここで途切れからMAになり、その顧客とエンゲージメントを強化しながら、顧客は共感をしたものをSNSなど発信していく。前半の部分はカスタマーエクスペリエンスマネジメント(CXM)で、動的に画面が変わっていく仕組みである。まさに顧客にくっついていく仕組みで、DNPはHeart Coreというツールを使っている。
MA の部分にはdiip というDMP を提供している。実際の来店と店内動線分析を行うのがmoptar(モプター)reach(リーチ)で、その分析結果をもとに、MAで送る情報をパーソナライズド動画にするのがMOMEnT(モーメント)である。

・事例 顧客体験管理―動的CMS

複数の企業が組んで、出産予定のママと出産して間もないママを囲い込むビジネスしている。そのサイトリニューアルに当たってHeart Coreを導入した。
出産・子育てママのニーズは把握が困難で、経過月齢がつかめないために、対象顧客に必要なコンテンツ、その月齢に応じた広告が出せないという課題があった。
そこでSEO対策を徹底的に行うことで、困ったら一番初めに当サイトを訪れるように接点を増やす。ここで発信する情報も適切な情報量と質を求めて運用しながら最適化していく。
カスタマージャーニーマップを作ることによって、従来のサイトとコンセプトは変わっていないが、ママたちに寄り添うサイトとして、認知が高まっている。
サイトに来訪したプレママには出産予定日を入力してもらうが、個人情報は必要ない。クッキーによって、ウェブサイトを見ているママは何月に出産だと分かるので、そこに紐付いてコンテンツを出し分けていく。
何回もサイトを訪れているにも関わらず、会員登録しない人には会員登録誘導のバナーを出す。会員登録をしてもポイントプログラムに未参加の人にはポイントプログラムの情報を伝えるなどしている。
クリエイティブに関してはABテストで絵柄を変えていって、反応のいいクリエイティブに寄せていく。また裏側では属性推測をしている。

・事例 DMP×MAツール

DMPにMAの機能が付いたものがdiipである。
デジタルマーケティングで、あるべき姿の要素として
①分析と施策実行のシームレスな連携
②はスモールテストができる
③高速PDCAサイクル、
④が顧客起点のマーケティング
⑤が高付加価値業務の人的資源を集中
がある。
diipの特徴は4つある。一つは約120テンプレートの業務テンプレートである。例えば分析のテンプレートを選んでデータを入れれば、誰にどのコンテンツを送るかの設計ができる。
2つ目は、高度なキャンペーン管理機能で、シナリオ設計が簡単にできるようになっている。
3つ目が連携機能で導入コストを軽減、APIでいろいろなデータを持ってきて使うことができる。
4つ目が純国産。国内にR&Dを持つため要望・サポートに柔軟に対応できる。
業務の流れとしては、ビジネスの要件の作成、ユーザー調査、カスタマージャーニーの作成、いつ、どの状況の時に、そのコンテンツを発信するかを作る。
リアル書店、通販、電子書籍ストアを持つある書店に導入した。従来ピラミッド型で、導入客、中位客、上位客、優良客と上に上げるような施策をしていた。
これを来店前の来店、来店客へ購入を促す、購入客をまた来店させるというような循環構造で運用するようした。結果としてメールの開封率が倍増し、メールの配信作業も短縮、ターゲティング精度向上によって出版社との協働施策実施、人ごとの商品別割引(オファー商品)、購入後メール(レビュー依頼)ができるようになった。
MAで成功する要因は、目標、データ収集、分析、ツール、組織・体制をしっかりと行う。一番重要なのは実施の目的や目標がしっかり設定されており、ブレないこと。

・事例 店内動線データ分析

動線分析は、入店→通路→売場→立寄→商品棚→購入までの行動プロセスをブレークダウンし、仮説検証ができる。いろいろな測定方法があるが、DNPではレーザーセンサーを使っている。これは二足歩行の物体を捉えて、動線を分析できるが、性別は分からない。
入店者数、通路の通行者数、売場の通行者数、立寄者数、商品棚で商品を手に取った人数、購入者数、それぞれの転換率を定量化する。
コンビニエンスストアA社の場合は、店舗状況の可視化を行い、課題の発見につなげている。店内の複数個所に設置し、顧客が入店すると自動的にIDが振られる。動線を把握することでサイネージにコンテンツを出したり、アプリに発行したりできる。
以上のように見える化によって効果的なプロモーション展開・商品陳列の効果測定を実現する。また、クルーのオペレーション状況を把握するなどして、クルーの効率化につなげるなどの効果が期待できる。

・事例 パーソナライズ動画活用

パーソナライズ動画のニーズが高くMAツールに実装して、メールと一緒に配信している。スマホ、PC、タブレットなどさまざまなデバイスに対応し、メールが送られたユーザーが動画をどこでシャットダウンしたかなども計測できる。個人情報が入るので、きちんと管理して配信するときに突合わせしてから送る仕組
みを作っている。
動画のナレーションで、個人名などの音声読み上げにはAIロボットを使用して、自動的に読み上げる。例えば銀行が活用すると、顧客の残高はもちろん、今月は電気代使い過ぎたというようなことを読み上げできるし、表示もできる。ある住宅メーカーでは、来場促進に活用して、パーソナル動画によってメールの開封率は2倍になり、ウェブのインプレッションは30%伸びて、動画視聴率が80%、動画を観た人の1.7%が来訪した。この来訪率は、通常のメールで開封してモデル展示場に来る率よりかなり高い。

4つの類型

デジタルトランスフォーメーションは、デジタル組織を作ることだが4つの類型がある。
1.全社横断型―経営層に直結した独立した組織をつくって権限を持たせる。
2.事業特化型―既存の事業部の中に、事業特化型の組織を作る。
3.機能特化型―複数の事業部を横断してデジタル化の組織を、兼務発令する。
4.新しく事業部を作る
GE、日立製作所はこの中の三つ、BMW、クライスラーは二つ、マクドナルド、ナイキは一つの類型で行っているが、事業部をつくるというのはない。1.2.3が発展して4になると考えられる。
いずれにしろ、デジタルマーケティングは意思決定が遅いと命とりなので、意思決定できる役員クラスの人に直結することポイントである。
ビジネススタート時の組織例としては、ビジネスモデルを作る人(ビジネスアーキテクト)と、スーパーエンジニア、オペレーションデザイナーによる組織を既存のIT部門と協力し、母体となる事業部の営業、サービス・商品企画からの協力体制を得ることが重要になる。更にある程度予算を組んで、トライできるような組織にしていかないと、トランスフォーメーションはうまくいかない。

※次回のJAGAT Summer Fes2018は8月22日(水)~23日(木)に開催します。

JAGAT Summer Fes 2018」8月22日(水)、23日(木)@東京都杉並区 JAGAT本社

「デジタル×紙×マーケティング」をテーマに page2019 開催!

2019年2月6日(水)から8日(金)の3日間、国内印刷業界最大級のイベントpage2019を開催します。
今回のテーマは「デジタル×紙×マーケティング」です!